Don't mistake sugar for salt.

読んだ本や思ったことの記録

ほんとうにもう帰りたい① 細川重男著『執権』

久しぶりの読書メモ〜〜〜。

鎌倉幕府の第8代執権、北条時宗の伝記を読むのが趣味だ。

特に北条時宗が好きというわけではないのだが、何だか北条時宗の伝記を本屋さんや図書館で読んでしまう。ヤバイくらい時宗という人物は学者によって人格が変わる。非常に真面目で苦労人の青年から、仲裁上手、わがままな独裁者まで。
ビリー・時宗・ミリガン・北条感じたさに伝記を読んでしまうのだ。

さて、話は変わって、今年の大河ドラマの主人公は鎌倉幕府第2代執権・北条義時である。

正直なところ、北条時宗の伝記をよく読むだけで北条義時とかよくわかんない。北条時宗のひいおじいちゃん(北条泰時)のパパという印象しかない。

だが歴史好きを標榜する者としては、一緒に大河ドラマを見る家族に知ったかぶりをしなければならない。

急いで北条義時のことを手っ取り早く知りたい!!!

と思ったら、そういえばあったのである。北条時宗の伝記としてKindleに入れておいた本の中に。

義時の伝記が。

 

この本は、前半は北条義時、後半は北条時宗の伝記となっている。文章自体はわかりやすく非常に綺麗なのだが、流麗な文章の途中で半端なく笑かしてくるので、「鎌倉時代版『坂本ですが?』」と影で呼んでいた本である。

 

時宗目当てだったため、前半をほぼ流し読みしていたのだが、まあこれを機に全部読んでみるというのもいいかもしれない。

 

真面目な歴史の本は「この本は何がテーマなのか」をちゃんと設定している。

本書も『坂本ですが?』ばりの流麗な笑いを持ってきているとはいえ、歴史学科の学生がレポートの参考文献にも使用できるレベルの高度な歴史の本である。歴史に関心はあまりないけれど読書時間があるから読むような「逆説の日本史」とは購買層が違うのでご容赦を。しかし、正直、史跡の調査に参加し当時の文献を紐解く、いわゆる「現場」に身を置いている歴史学者が書いているだけあってこっちの方が臨場感があって面白ゲフゲフ

本書のテーマは「何故、北条氏は将軍にならなかったのか?」という鎌倉幕府の根幹に関わる問いを立てている。すっぱり言ってしまえば、本書によるとその答えは「将軍を推戴してこそ北条氏の権威は保たれるから」である。

本書によれば、

義時の後継者である北条氏得宗は、鎌倉将軍の「御後見」として鎌倉幕府と天下を支配する

という意識を北条家は抱いていたのだそうだ。

武内宿禰という伝説上の忠臣にみずからをなぞらえた北条氏は、忠誠を誓う主君である将軍を戴いて鎌倉幕府と天下を支配する、というふうに自らを規定したのだ。

それを決めたのは承久の乱と蒙古襲来だった。承久の乱北条義時後鳥羽上皇の理不尽な言いがかりから御家人を守ったことで朝敵とされてしまう。しかし、義時は粛々と頼朝の縁者を将軍を推戴して限りなくNo.1に近いNo.2としてふるまい、当時の日本人からすると神の怒りともいうべき上皇の追討命令をはねのけて勝利を収める。
北条時宗はひいおじいちゃんのパパの行動を見習い、惟康親王源惟康)を将軍として推戴しつつ、宇宙人の襲来にも近い蒙古襲来をはねのけた。

経済的な理由でも政治的な理由でもない。そこにしか価値を見出さない人は、「なんの結果も得られませんでした、ってことですか?」といってしまいそうな論だ。実際Amazonレビューにもそういう意見があった。

物質的な理由はそこにはない。これは祈りだ。北条家という日本史でも稀に見る汚名と流血と苦悩を強いられた一族の強い祈り。誰かを支えることで自分たちが立てるという祈りをすくい上げた論だった。

とてもいい本だった。と、読書メモをここで終わりにしたいのだが、義時が執権になるまでの鎌倉幕府内の抗争がヤバすぎるので(=大河の予習になりそうなところを)以下、メモをしていく。

まあ、要点はこの三つだ。

鎌倉幕府初期は凄惨な事件が多すぎる

鎌倉幕府初期は凄惨な事件が半端なく多すぎる

鎌倉幕府初期は凄惨な事件が無理みが強いレベルに多すぎる

あと北条義時 嫌な男すぎる わー 小四郎くんがあんな嫌な男になるなんて

 

問題は、鎌倉幕府初期におきた凄惨な事件のかなりの数に、北条義時が重要参考人として関わっていることである。どう考えても一年に一回は北条義時は神奈川県警に出頭し、事情を聴取されなければいけない。

てなわけで次の記事に鎌倉時代初期に起きた御家人たちの内ゲバをメモするのは譲る。

ちなみに今年の大河ドラマはムッチャクチャ面白い。

 

音楽もとってもかっこいい。

 

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