2022年度大河ドラマ 第20回 感想メモ
キターーーーーーッ!!!!
「北条義時」、満を持して登場!!!!!!!!
私の待っていた「北条義時」がここに!!!!!!
無事に小栗旬は平幹二朗や伊東四朗の父、渡辺謙の曽祖父、池畑慎之介☆、原田美枝子の祖父になれそうです。
そんなわけでオタクが発狂していますので追記にしまっておきます。
■闇落ちで正しいのか? という話
①奥州へ、「藤原秀衡の弔問に来た頼朝の使者」という体裁で訪れる
②義経の引き渡しを藤原泰衡に要求する。「九郎殿は今は頼朝に対する謀反の心なんてないから!」と泰衡に突っぱねられる。
③その場で泰衡とその庶兄の国衡の兄弟仲が悪いことを確認すると、義経のところへ赴く。
④些細なことから義経がまだかつての自分に固執しているのを察すると、思い出話をし、わざと激昂させる。
⑤激昂した義経と、そこに同席して同調していた国衡を確認すると、「鎌倉への憎しみが抑えきれないところまで膨らんでるみたいだけどどういうことなの!?」と泰衡に注進しに行く。
⑥泰衡と国衡の兄弟仲の悪さにつけ込み、泰衡に国衡と義経が挙兵するようだと責め立てる。
⑦逡巡する泰衡の前で弟の頼衡を殺害。頼朝の信を得るために義経の首は不可欠だと説く。
⑧追い詰められた泰衡、義経を攻める。(義時は何事もなかったかのように帰還する予定だったが義経に呼び止められる)
(⑨このあと、義経を殺害したなと頼朝が怒って奥州を攻める予定)
鮮やかでした。もう本当に鮮やか。平伏しました。心理戦が得意な北条義時らしい策謀でした。
対外的にタカ派の国衡は義経を奉じて鎌倉へ攻め込みたい一方で、泰衡はバランス感覚に優れているため鎌倉とことを構えたくない。しかも泰衡は当主として自立した権力を持ちたい。その対立を利用して兄弟の猜疑心を煽り、泰衡の心を揺さぶって義経を殺害させる。……お見事でした。
頼衡に襲われかけたり、最後義経に見抜かれたりするヘマはやらかしましたが、「初めての策謀」にしては100点満点だったと思います。
しかも、表向きは「藤原秀衡の弔問に来た頼朝の使者」なのですから、大したことはしていません。
単なる使者でも、秀衡の弔問に来たついでに鎌倉幕府における大罪人である義経の様子を確認すること、身柄の引き渡しを要求することは鎌倉幕府の対外姿勢としてはありなんじゃないでしょうか。
義経に会えば思い出話もするでしょう。
単に泰衡と話をしていただけなのに、襲いかかってきたのは頼衡なのですから、頼衡殺害のかどで咎められることもありません。むしろ泰衡としては義時に貸しを作ってしまいました。
すべては泰衡と国衡、義経が選択したことです。義時は単におしゃべりしただけ。あと襲いかかられただけ。
義時の子孫を描いた大河「北条時宗」では、義時のひ孫にあたる北条時頼が息子にこんなことを言っています。
「時利。この鎌倉にはな、魔物が棲んでおる。親兄弟をも争われる魔物がな」
「魔物?」
「わしはその魔物に、そなたと正寿丸を奪われとうはない」
「よいか時利。そなたは側室の子として分をわきまえ、生涯正寿丸を支えるのじゃ。それが北条家安泰の道じゃ。その魔物を封じ込める唯一の手立てじゃ」
時利こと時輔は母親を亡くしたことでいち早くその魔物に取り込まれて何よりも愛する弟を守れなくなってしまうのですが、……それはさておき。
まさにこれ。義時は魔物を鎌倉から奥州へ連れてきてしまいました。いつからこんな男になった。
しかも影が差すところと後ろ姿は泰衡を誘惑する妖艶な美女のようで、しかし光が差せば実直そうな武官の顔をしている。後ろ姿が異常なほど男装した女性なのですよね……今の義時。頼衡が彼を襲うシーンもまるで兄を堕落させる愛妾を始末するかのようでした。
禍々しいほどに美しい映像で、泰衡を口説き落とすシーンは主人公があまりに極悪なのに見ていて飽きません。いや、極悪だからこそ見ていて飽きません。
ただ、この義時の変化が「闇落ち」で正しいのかどうかは疑問が残ります。
「父上!」
「はっ、重い重い」
「お土産は? お土産」
「今日はない。母上はどうした」
「お土産は?お土産。お土産~」
「ない!」
家庭では息子の金剛の重さ(成長)に喜び、わがままに手を焼かされるごく普通の父親をしています。
ダークサイドに逝ってしまったなら、ルークとレイアを育てなかったアナキン・スカイウォーカーのように、金剛を突き放すのではないかな……、というのが正直なところです。義時は人格そのものは腐敗していません。
私としてはどちらかというと「コードギアス」のルルーシュやに近いものを感じました。ルルーシュは妹のナナリーの前では良き兄であり、身体障害者であるナナリーが安心して過ごせる場所を作るため(ルルーシュ達の過ごすブリタニアという国は弱者に対する虐待を大っぴらに肯定しているため)、母の死の真相を知るために様々な謀略に手を染めます。ルルーシュは闇堕ちしたのではなく、地獄の底で覚醒しました。
義時も、上総介の誅殺は壇ノ浦のごとき惨状を起こさないためだったのだと理解してしまった上での「覚醒」といったほうが正しいのではないかと思います。思えば彼は腹の底に蛇を飼っていました。
4話では、
「そのお考え、一日も早くお捨てになられた方がよろしいかと存じます。たしかに、我らは坂東の田舎者。しかしながらいまは、その坂東の田舎者と力をあわせねばならぬ時でございます。彼らあっての佐殿。それをお忘れなきよう」
と18歳(満16~7歳)なのに頼朝を脅しています。
さらに7話では、
「必ず勝てるってここで誓えるか?」
「誓えます」
「言い切ったな?」
「ご自分でおっしゃったではないですか。上総介殿が加わってくだされば、必ず勝てると」
と18歳(満16~7歳)なのに上総介広常相手に凶悪な笑顔を見せています。あれをオリジナル笑顔っていうんだろうなあ~~
たぶん頼朝も広常もこの少年の恐ろしい心の蛇を見たからこそ手元に置いたのだと思います。敵に回られたら何をされるか分かったものではありません。
■お土産は?
我らが希望・北条泰時こと金剛が成長した姿を拝見できました。
お土産案件から見るに、
①うるさい(義時)
②頑固(八重)
③しつこい(義時)
④わがまま(八重)
というまさに若い時の義時と八重の残念な要素が見事にミックスした子に育っているようです。いや~めでたい。名執権も子供のうちは思いっきり子供をしていればいいよ!あと母親似のサラサラ髪。
でも、これは、
①うるさい→弁が立つ
②頑固→芯の通った性格
③しつこい→諦めない
④わがまま→自己肯定感が高い
という名政治家の要素にかなり繋がってくると思うので、金剛がこれから熾烈を極める権力闘争と極めて有能な父の下でどんな経験をし、どんな政治家に成長していくのか楽しみです。
さて、義時が初善児とは思えないくらい善児を使いこなしていましたが、あれは善児の元主君で善児を育て上げた伊東の血のせいだと思うんですよ。ややポンコツ……美貌と美声で騙されていましたが、行動を振り返るに作中でも最高級のポンコツといってよかった祐清でさえ善児をちゃんと使えてましたからね。
そこで一番善児適性があるのは泰時なんですよね。伊東の血を父からも母からも引いています。
御所の女房であったという(そもそもそれも根拠が怪しいのですが)泰時の母の定説を採用せず、八重姫を泰時の母に採用したので、泰時が「はじまりの家」ともいうべき伊東家の血を色濃く引いていることは何か意味があるのではと思うのですよね。
泰時が善児を父親以上に使いこなす日が来るのではと思うと震撼します。それとも泰時が善児を封じるんでしょうか。
例の義村の娘・初ちゃんも出ていました。どうやら画面を細かく見ていくと義時と鞠で遊んで欲しかった模様。
金剛に比べて寡黙でマイペースなタイプのようです。こちらは父親の義村に似ています。血は争えないというやつですね。
……父親に引き取られる日は来るのでしょうか。そもそも父親が婚外子を引き取れるようなポジションを三浦家内で築いているのだろうか、とは不安になります。優等生を家庭内で演じ過ぎていませんかね。息が抜けるところが家庭内では無い、ということはないですよね?
初が預けられて4年、さすがに顔は見にきてるよね……と思いたいです。初が父親を父だと認識しますように。なにせ義村は初のことを非常に愛しているようでしたから。