後鳥羽は高評価だが敗者、実朝は途中で死去し、北条義時は勝者だが性格が悪いという、非常に面白い書き方をしている本書だが、勝者の側で高評価な人物がいる。
この本はおそらく三浦義村さんが裏主人公なのではと思われるほど、彼がターニングポイントでナイスな働きをしているのだ。さかい先生の推しは三浦義村さんなのだろう
1、将軍の後継を決める
三浦半島を有するため、三浦家をものすごく推している神奈川県の公式サイトによれば、三浦義村は「三浦一族全盛期の当主。執権家や公卿の姻戚となり、特に中納言二条俊親を都とのパイプ役に使うなど、三浦氏を北条氏と並ぶ家格に押し上げました」というお方だそうである。なんかすごい人なんだな山本耕史の外の人
ちなみに今回の大河ドラマに出ている人間は神奈川県民や神奈川移民の比率が高く、三浦義村のみならず、大庭景親や源頼朝、北条家、梶原景時など、錚々たるメンバーが神奈川県民や神奈川に移住してきた民である。
つまり神奈川県民の神奈川県民による神奈川県民のためのドラマ
となると北条家とは拮抗することになり、三浦と北条は仲が悪いのではと思ってしまう。特に両家の結末が北条家が三浦家を族滅する宝治合戦である以上、水面下で緊張関係にあると思っていたのだが……。
本書によれば三浦義村はとてつもないまでの親北条義時派だった。
(権謀の人と称され、弟さえも裏切っている)義村は一貫して北条義時の側に立っており、ブレはない(p.169)
「三浦義村だ!!話は伺った!!!!義時殿、貴殿、困っておるそうだな!!いい情報を教えてやろう!私は和田義盛を裏切る!!」
というやつである。
私は真面目な歴史書でこんなウエットな記述を見ることになるとは思わなかった。
普通歴史書である人物とある人物が近しい関係にあると推定する場合、夫婦や親子・親族などでなければ、その理由を冷徹に分析していく。
例えば、の話だが「三浦海岸で取れるマグロを北条家が買っており、ツナ缶として加工して鎌倉で販売していたので三浦義村と北条義時の関係は親しかった」などという風に、である。
実際三浦がマグロを北条に売って北条がツナ缶を加工・販売していたかどうかは知らん
だが本書では三浦義村が親北条義時派である理由がきっちりとは書かれていない……気がする。
本書の三浦義村は北条義時が無条件で大好きなようである……???????
?????????????????(ワカラン)
大河ドラマで北条義時と三浦義村に厚い友情がある理由は考証のさかい先生がみたにん先生に耳打ちしたせいではないだろうか。9割そのせいだ。
さて、この三浦義村は実朝が暗殺された直後、後継者を決めるにあたって妙案を出す。
「話は伺った!!!!貴殿たち、困っておるそうだな!!いい情報を教えてやろう!!!摂関家に三寅様という頼朝公の遠縁がいる!それを引き取って将軍にしてはいかがだろうか」
なんだこいつ あたまがいい
幕閣は大拍手であった。こうして四代将軍藤原頼経が誕生する。それと同時に幕府は源家の血を引く人間全てを【ピー】した。無用な後継争いを避けるためである。
この点、「鎌倉幕府にとって将軍ってなんなんだ」という疑問が湧いてきて面白い
2、義時追討の院宣をちょろまかす
後鳥羽院はいい加減にキレたので、追討の院宣を出すことにした。後鳥羽は幕府の存在を有用なものだと認識していたようだが、「北条義時が言うことを聞かないから幕府も俺のコントロール下に入らないのだ」と当時の状況を分析していたため、北条義時その人を粛清するという解答を出す。
ところがぎっちょん、そうは義時過激派(本書ではなぜかそうなのである)の三浦義村が卸さない
三浦義村には弟の三浦胤義という人物がいて、後鳥羽院は胤義を味方に引き入れた。
当時の三浦家は様々な都合で胤義の方がステータス的に上になってしまっていたらしい。これで心中穏やかでいられる兄は数少ないと思う。
後鳥羽院は「弟側」なのでそこら辺の兄弟間の感情の機微に疎かったのだろう。胤義を通じて義村を味方に引き入れようと画策していた。
後鳥羽院も一回くらい兄の守貞親王こと後高倉院に「弟のが社会的ステータスの高い兄の複雑な気持ちについて」とか聞いておくべきだったかもしれない。義村が何を考えるか予測がついたかもしれない。
京都にいる胤義は無邪気にも(?)兄に「一緒に俺たちの仲間に加わろうぜ」と書状を書き、使者を送る。その使者は義時追討の院宣を持ってきた押松という少年も拾っていた。
そこで義村は返事もせずに使者を追い返して、義時追討の院宣に困り果てている義時のところへ向かい、
「話は伺った!!!!貴殿、困っておるそうだな!!いい情報を教えてやろう!我が愚弟から聞いたのだが、押松という貴殿の追討を命じた院宣を持った輩がウロウロしている。院宣が他の御家人にバレる前に始末してはいかがか」
と提言する。
マジで義時の味方すぎr弟にキレている。
弟の誘いに返事をしないで執権にチクるというところがマジでキレている きっと背中に怒りの暗黒のオーラが漂っていたのに違いない
3、承久の乱でなんかものすごい働きをする
承久の乱で総大将として活躍したのは義時の息子である北条泰時だが、彼はまだ本書曰く「若手のホープ」であり、実際彼を支えていたのは三浦義村だとする。
なんだ本書の三浦義村無双は
でもその方が現実味はありそうだ。泰時は幼少期が源平合戦で、戦争の経験があまり多いとはいえない。そこをうまく支えていたのが三浦義村なのだろう。なにせ泰時の離婚した妻の父、つまり元舅でもあrっっっっr
……離婚した妻の父って世界で一二を争うほど微妙な関係だと思う。
泰時は妻と仲が悪くなって離婚したわけではなく、政治的都合で離縁させられ(北条と三浦だから、常人には推し量れない政治的な何かがあったんだろう)、その後も元妻と良好な関係を保っているそうなのだが、それでもやっぱっっr
きっと泰時は下手を打つと三浦義村に後ろからすごい睨まれるというプレッシャーを感じていたのだろう。だから勝てた(違うと思う
本書では泰時単独の功績とされているものの結構な数を義村も加わっての功績と捉えている。勉強になった
中途半端なところで終わりになってしまった なぜなら今日は寒いからである。
最後に難点をあげれば、『承久の乱』、白河・鳥羽院政のところはかなりgdgdなので(いまだに崇徳院叔父子説を採用している)、美川圭先生の『院政』を読むことをお勧めする。しかし、一方で美川圭先生の『院政』の実朝暗殺のところはかなりgdgdなので(三浦義村黒幕説を採用している)、この『承久の乱』の実朝暗殺のところを読むのをお勧めする。
*1:あれ?従兄では