Don't mistake sugar for salt.

読んだ本や思ったことの記録

白銀の墟 玄の月1・2を読んだ①麒麟が謀りごとをするとき

 こんな台風の惨禍のなか、研修に近い出張のために、直帰できたので本屋さんへ行った。

ミーハーだからよう!十二国記の最新刊を買うためによう!

説明しよう!「十二国記」とは、古代中国風の、国が12個ある異世界で繰り広げられる硬派で上質なファンタジー本なのである。主人公は事実上二人いて、双方とも日本の高校生。
一人は中嶋陽子ちゃん。赤毛に悩む気弱な女の子。その子は、例の十二の国のうち、東にある「慶」という国の王様に選ばれ、この異世界へ飛ばされて、壮絶な苦労を経て玉座に就きます。じゃあどうやって陽子は王様に選ばれたのかといえば、前王の血族だったからでもなんでもなく、十二の国にそれぞれ王様を補佐し天の意向を汲み取る神獣・麒麟というのがいるのですが、そいつが選ぶのです。
その麒麟は獣のくせに人型をとり、うっかり日本の男子高校生をやっていたりすることもあります。それが今回の主人公(?)、泰麒。日本では高里要くんと呼ばれていました。で、彼は十二の国のうち東北の戴という国の麒麟なのですが、選んだはずの最愛の王様は半年で行方不明になり、本人はクーデターで傷つけられ、記憶を喪失して日本へ逆に飛ばされてしまいました*1
このときの高里くんのDKライフを書いたのが「魔性の子」という、このシリーズでいうエピソード0のような作品です。

 

で、王様と麒麟が行方不明になり、戴国が荒れていることを嘆いた忠義の将軍が、行方不明になった泰麒の捜索を、慶の王様として地道に成長しつつある陽子と行うのが、今までの長編最新作「黄昏の岸 暁の天」。
けれど、それ以降びっくりすることに十八年も長編の新作が出てませんでした。「黄金の岸 暁の天」は、「魔性の子」の時間軸に回帰した作品である上、数奇な運命を歩んできた主人公二人(陽子と泰麒)の道行が重なった話でもあるので、作者の方は、「黄金の岸 暁の天」で完結したい、というご存念だったのかもしれません。
彼らの未来は自分で考えてくれ、という、余白のあるラストでした。

ただ、逆にいえば、あまりに「黄金の岸 暁の天」が続き物のような終わり方であり、読者としては気になります。私は「この後どうなったんだーー!!」と頭をかきむしり布団にジッタンバッタンし半日動けなくなるという深刻な症状が出るので、なんど十二国記シリーズを本屋に売っ払おうとしたか。

うっぱらわなくてよかった。新刊が出るって聞いて。

 

 

 

以下、十二国記シリーズを読んだことある人ならわかる、壮絶なネタバレを含みます。全てが「戴の人は幸せになる」という希望的観測のもと書いています。

続きを読むにしまっておきます。

*1:もともと彼自身、日本で生まれ、かの異世界へ連れ戻された過去があります。あちらとこちらを行ったり来たりしてる苦労の多い麒麟です

続きを読む