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大河ドラマ感想@28回

しばらく私生活が多忙のため、大河の感想を簡略化/お休みします。

今回のテーマは「忠臣は二君に仕えず」。その対象となったのは結城朝光と梶原景時でしたね。

結城朝光と実衣ちゃん、かなりツボな関係でした……
中の人の発言や所作を見るに、単に妖艶な容姿なだけで中身は優等生の生真面目さんだったとのこと。そう思って見返すと、ただ妖艶な男性が人妻を騙しているという単純な構図ではなく、朝光としては実衣ちゃんとの琵琶の時間が「頼朝が亡くなり、その忠臣だった自分の居場所ではなくなった世界」での一筋の光明ではなかったかと、本当に深みを感じます。おそらく最後は「ああ義村は新しい世界を作りたいのだ」と理解して、義村に、「頼朝の烏帽子子」「側近」として重責を担う御家人ではなくただの琵琶奏者でいられたその居場所も提供してしまうんですけどね。
うーん、史実では断金の盟友とされており、ドラマ上でははっきり書かれてませんでしたけど、考えれば考えるほど義村と朝光の絆は深いなと。
案外義村の「しばらく姿を隠せ」というのは「忠臣は二君に仕えず」という言葉が出るほど頼朝に思い入れが深く、頼家の政治に色をなしている朝光への「一旦領地でゆっくり休め」という気遣いのようにも感じました。

朝光にとっての実衣ちゃんとの琵琶の時間——息抜きできる時間を持てなかった梶原景時はただ頼朝への忠心を抱いたまま死んでいきます。おそらく景時は頼朝にしか忠誠を抱いていないことと、義経という幻影を追いかけていて、頼家本人を見ていないことを見抜かれてしまったからこそ、頼家もかばうことができなかったんでしょうね。

で、二君に誠心誠意仕えている北条義時はあざやかに忠臣の顔をして忠臣ではないのですよね。仕えるは頼朝の生んだ鎌倉幕府。頼朝でも頼家でもない。朝光や景時のように、頼朝や頼家という「人」に肩入れしたら、その瞬間、その創生で死んでいった兄・宗時や上総殿、義経、義高などなどの面々に対する感情と折り合いがつかず壊れてしまうんでしょう。
だからもし、頼家が鎌倉幕府の破壊に乗り出したら、義時は容赦しないだろう。そんなことを予感させる回でした。